(1)で述べたように、覚書き程度であることを前提に読んでいただきたい。
(2)PCRの必要性について計算
この計算は医師国家試験で出る問題らしく、厚労省の官僚は知らないはずがない。結論からいうと、患者の疑いのある検体のみをPCRに回さないと、感染していない人で病院が溢れて医療崩壊する(ケースa)。
<補足> 感染者がPCRで陽性と判定される割合(感度)、非感染者の中で、PCRで陰性と判定される割合(特異度)
(ケースa)感染率0.1%(10,000人に10人)で感度70%、特異度99%の場合
症状がなくても接触者や希望者のみにPCR検査を行ったときの状況として計算すると(例えば感染率0.1%)、
感染者(10人) | 非感染者(9,990人) |
入院・隔離される人のうち、 真の感染者の割合 |
|
PCRの結果、陽性 | 正しい(7人) | 偽陽性(100人) | 6.5% |
PCRの結果、陰性 | 偽陰性(3人) | 正しい(9,890人) | - |
結論:偽陰性3人を取り逃がし、真の感染者10人より非感染者の偽陽性を100人も入院・隔離されることになる(入院・隔離者のうち、93.5%は感染していない人で占有される)。
(ケースb)感染率10%(10,000人に1,000人)で感度70%、特異度99%の場合
日本の初期対応である。つまり症状があって濃厚接触者など、かなり確度が高い人のみPCR検査を行ったときの状況として計算すると(例えば感染率10%)、
感染者(1,000人) | 非感染者(9,000人) |
入院・隔離される人のうち、 真の感染者の割合 |
|
PCRの結果、陽性 | 正しい(700人) | 偽陽性(90人) | 89% |
PCRの結果、陰性 | 偽陰性(300人) | 正しい(8,910人) | - |
結論:偽陰性300人を取り逃がしてはいるが、陽性であった人間の中で真の感染者は700人/790人であり、89%が正しく入院・隔離できていることになる。
(まとめ)
同じ10,000人を検査しても、患者の疑いのある検体のみに絞らないと、PCRで陽性と出た場合の精度が、89%から6.5%に下がってしまい、本来なら入院しなくてよい非感染者がベッドのほとんどを占めることになる。逆に言い換えれば、ほとんどが非感染者で占められてもよいくらいの十分なベット数があれば、PCRはどんどんやってよいということであるが(院内感染させないのは当然)、そんな恵まれた地域は限られるだろう。
さて、どの国の対策が最も正しいのか、それは10万人あたりの死亡者数でだいたい判断できるのではないだろうか。日本の動きが遅かったことは確かであるが、個人情報を守りつつ、死亡者数を低く抑えているのは、(現時点では)悪くないように思える。
(20200513)